カイロプラクティック・オフィスのHPを見ていると、多かれ少なかれ一定のパターンがある。
大抵の場合、カイロプラクティックの説明から始まる。
まずはカイロプラクティックそのものを知ってもらわなければならない。
当然のことだ。
次に、「施術の流れ」のような項目がある。
説明のあった“カイロプラクティック”がどのような形で行われるのか、写真付きで解説してある。
ちなみに、ウチの研究所は文章だけで流れを説明している。
………モデルがいなかったんだよ、単にね。
この点に関しては近日中に改善予定なので、軽くスルーしてほしい。
まあ、その説明の中で、まず話を聞いて、適切な検査を行うというのが一般的だ。
そこで施術方針を説明するか、施術をした後で解説をつけるかはオフィスによって異なる。
個人的には、施術後の解説はどうなのかな~という思いが強い。
このことについては以前書いた通りだ。
施術する以上、検査から導き出された何かしらの“診断”が頭の中で起っているはずである。
もちろん、私達カイロプラクターが“診断”することは許されていない。
そのため、RMIT日本校では“カイロプラクティック診断”という、何とも苦しい表現が使われていた。
まあ、表立って“診断”という言葉さえ使えない以上、仕方がない部分もある。
言葉尻を掴まえてぎゃあぎゃあ言われるのもバカくさいので、最大(小??)限の注意は払う。
にしても、やっぱりバカくさい。
この虚しさから解放されるのは、いつの日か…。
[4回]
RMIT日本校では、インターンが1度起てたカイロプラクティック診断は絶対に近いモノがあった。
仮に初回と違う所見が見られたとしても、初回の診断が優先される。
それを覆す場合、今一度検査を行った上で新たなカイロプラクティック診断を起てなければならない。
「じゃあ、お前が最初に起てたカイロプラクティック診断は何だったんだ??」
クリニシャンにそう指摘されるインターンをよく見かけた。
そう言われてしまうと、インターンからすれば返す言葉もないだろう。
インターンがテキトーにやっていたとは思わない。
初回検査時も間違っていなければ、所見が変わった時の検査もまた間違ってはいないのである。
“一致しない=間違い”とは必ずしも言い切れないはずなのだ。
だからといって、カイロプラクティック診断を起てるが為に検査を1からやり直すというのはなかなかできない。
時間もかかるし、相手に対する精神的な負担も少なくはない。
何よりも、築けつつあった信頼感を失いかねないリスクがある。
決断を求められる学生インターン。
最ももどかしい瞬間であり、クリニシャンのいないところで最も舌打ちが聞かれる瞬間でもある。
しかし、ある意味最も勉強となる瞬間でもあるのだ。
もっとも、そのことに気づくのは教育機関の外に出てからになるのだが…。
自らが起てたカイロプラクティック診断と食い違う現実に悩むインターン。
そうした光景を横目に、私には納得いかない面があった。
生活している以上、状態は変わって然るべきだと思うからだ。
それなりに根拠がある。
根拠というか、経験だな。
これは以前、私がライフウエストでガンステッドの期末テストを受けた時の話。
実技試験はX線写真を基にリスニングを決め、それに則ってアジャストメントを行うというモノだった。
私のパートナーが3ヶ月前に撮影したという写真からは、明らかに右のPIの所見が診てとれた。
が、実際のパルペーションでは、これまた明らかに左のPIだったのである。
うーむ…、これは困った。
なかなかアジャストを始めない私に対して、試験官であるドクターが急かしだした。
事情を説明すると、「そんなことはありえない」と言わんばかりの態度をとられた。
しかし、実際に確認してもらうと、今度はドクターも首をかしげ出した。
『この場合、どっちのPIをアジャストしたらいい??』
ドクターに指示を仰いだ私は、結局左のPIをアジャストした。
ドクターは3ヶ月前の彼よりも今の彼の所見を優先したのである。
この決断は、先に述べたRMITのそれとは真逆のモノとなる。
確かに、自分の起てた“診断”がコロコロ変わるというのはオカシイ。
何より、その信憑性が疑われる。
だからといって、目の前にあるサブラクセーションを無視するわけにもいかない。
そんな中、つい先日ではあるが、業界の御大の口から衝撃の発言が飛び出した瞬間を目の当たりにした。
「触診なんて80%はアテにならない」
経験も実績もある御大の言葉である。
こう言われてしまっては、若手のカイロプラクターなどはもはや頭を抱えるしかないだろう。
触診がアテにならないのであれば、他の方法で補っていくしかない。
それが神経学検査であり、整形学検査である。
もちろん、姿勢検査だってカイロプラクターにとっては重要な要素となる。
そこに問診が組み合わされば、自分の中でかなりの“診断”を起てることが可能となる。
「触診が80%アテにならない」一方で、「結果の出る出ないは問診で80%決まる」とも言われている。
X線写真を用いることができない日本では、特に問診から得られる情報が大きい。
RMIT日本校で初回の“診断”が食い違ってしまったエピソードを先に述べた。
実はその多くも、おそらく問診の不足が招いたモノだと思っている。
ある程度の時間経過も、また何の要因もナシに状態が変化するというのは、さすがにあり得ないだろう。
そこをテキトーに済ませようとするからツッコまれ、叩かれるのである。
学生インターンのうちはともかく、実際の現場でそのような振る舞いは許されない。
そうしたミスを侵さないがためにも、カイロプラクティック教育のより一層の充実が求められる。
これは学生だけにとどまらず、カイロプラクターに対しての卒後教育も含まれなければならない。
アート、サイエンス、そしてフィロソフィー。
あらゆる面での向上を求めて、カイロプラクター各人が自ら行動していかなければいけない。
そう、自らだ。
日本のカイロプラクティック業界は、触診以上にアテにならないのだから…。
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