「結局ねぇ、自分から治そうとしない人はダメなのよ」
先日、ウチの待合室でこのような発言が聞こえてきた。
このセリフが利用者から自発的に出ることはヒジョーに喜ばしい。
カイロプラクター冥利に尽きるといったところだ。
おそらく、この方はカイロプラクティックの理論や哲学など理解されてはいない。
下手をすると、“サブラクセーション”という言葉さえ知らないかもしれない。
それでも、治すのは自分自身だということには気づいている。
カイロプラクティックの施術を受け続けることで、身体が自覚したのだろう。
こうした自覚は、既に理屈を超えたところにある。
その一方で、それらを理解できない、また理解しようとしない人も多い。
[3回]
「先生、お話があるんですけど…」
何やら思いつめた表情で、こう切り出してくる。
大抵は女性だ。
告白でもしてくれるのなら有難いが、そうした雰囲気は微塵も感じられない。
そもそも、このテのことは年配の方からがほとんどなので、交感神経も全く刺激されない。
せいぜい、キツめの香水で鼻腔を刺される程度だ。
出血こそしないものの、それはそれで結構イタイ。
で、次に言ってくるセリフは十人十色なれど、集約するとこういうことになる。
「(高い金払っているのに) 効果が感じられないんですけど…」
まあ、誰しもが経験する、もしくは、したことがあることだと思う。
カッコの部分がなければ、何も言ってこないのかもしれない。
その代わり、ネット上で好き勝手に呟かれている可能性も否定できないが…。
こうした人たちに共通している面がある。
それは、施術側への完全依存。
つまり、治してもらう気マンマンなのだ。
よって、ホームエクササイズなどを指導しても、まずやらない。
バレないと思っているのかもしれないが、こちらからすれば一目瞭然だ。
太ってても脂ぎってても、こちとらプロである。
それでも、自分のことは大きく棚に上げて、ネチネチと責めてくる。
そう、攻めてくるのではなく、責めてくるのだ。
確かに、結果を出せなかったのが悪いと言えば悪い。
しかしながら、必ずしも結果が出るケースばかりとは限らない。
初回の面接時、「いろんなところを回ってきました」ということを当たり前のように言ってくる人は要注意。
“患者のプロ”を自負しているのか、変なプライドが芽生えてしまっているらしい。
そのため、こちらには理解しがたいタイミングで訳の分からん決断してくる場合がある。
中には、「もっと勉強してから触りに来い!!」などと言い放つ人もいたりする。
カイロプラクティックに対する、ご本人なりの基準があるらしく、そこに至らなければ叱責を受ける羽目に陥る。
その基準線がこれまたよく分からないので、面倒なことこの上ない。
しかし、こうした人たちと正面から相対できるようになれば、かなりの経験を積ませてもらえるのも確かだ。
ドラクエで言えば、はぐれメタルのようなモノである。
狙ってもなかなか当たらず、下手をすると攻撃を喰らった挙句に逃げられてしまう。
大きな違いは、経験値稼ぎの目的で、はぐれメタルを狙い待ちしないところだ。
と、ドラクエを知らない人には全く解らない例えだったな…。
何度でも繰り返すが、カイロプラクティックは何も治さない。
元在ったところに直すだけだ。
どれだけ勉強を積んだとてホイミなど唱えられようはずもない。
直したことによって、自らの身体に生じてくる変化を感じてもらわなければならない。
そのきっかけを与えるのもカイロプラクターの仕事だと思っている。
それでも、“治して”もらおうという意識を消し去るのは難しいだろう。
要は、そうした依存が信頼を上回らなければいいのかもしれない。
以前、私が翻訳に参加した「カイロプラクティックのこころ」にも以下のような記載があった。
インターン時代に担当した患者が一向に改善しない。
検査結果を見直し、診断を見直し、施術方法をも見直し、必死になって取り組むも結果が出ない。
仲間やクリニシャンの先生たちに相談するも、これといった解決策が見当たらない。
当然、患者側の態度も懐疑的になってくる。
結果が出ないことに焦りながらも患者を説得し、思い悩みながら施術を続ける。
そしてある日、劇的な改善をみせた。
「君を信じてよかったよ」
その言葉を受けて号泣してしまった、というものだったと記憶している。
残念ながら、私はそれほどまでの体験をしたことがない。
それでも、カイロプラクティックにはそれだけの力があるし、可能性が秘められていることは知っている。
そして、それを世に広く知らしめていくのもまた、カイロプラクターの仕事である。
こうした流れの中で、実に重みのあるべき言葉を軽々しく書いてみる。
カイロプラクティックってそんなモンである。
少なくとも、私はそう思っている。
都市伝説ではないが、信じるか信じないかはその人次第である。
まずはカイロプラクティックを感じて戴きたい。
理屈抜きで、ただただ感じてほしい。
全てはそこから始まるのだ。
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