前回の〆の言葉を読んで、きっと多くの方がこう思われたことだろう。
「いや、その日は結構すぐ来るんじゃないの??」
そうなのである。
そうなのよ。
予想以上に早くやってくるかもしれないのだ。
…違った意味でね。
[12回]
1995年、RMIT大学日本校が開校した。
オーストラリアの公立大学であるRMIT。
そのカイロプラクティック学科の日本校である。
ここに、日本におけるカイロプラクティック「国際基準」が誕生したのであった。
何故オーストラリアなのか??
RMITの場合、当時の本校学部長がナショナル大学出身というのが大きかったと思う。
JACの中心メンバーもナショナル出身が多いことから、話はスムーズに運んだことだろう。
日本におけるカイロプラクティックの大学教育の道を模索していたJAC。
海外進出を考えていたRMIT。
双方の思惑が一致した結果と考えられる。
RMITに遅れること10年。
同じオーストラリアに本校を持つマードック大学が日本校を設立した。
ここに「国際基準」を満たす学校が2校となったのである。
これに加え、大阪にある国際カイロプラクティックカレッジが国際基準を満たした時間数の教育を行っている。
共にアクレディテーション(accreditation 教育機関のとしての質の認定)を申請していた。
流れとしては悪くない。
と思っていたところに、何やら暗雲が立ち込めてきた。
マードック大学日本校が来年度からの新規学生募集を中止するらしい。
私の知るところではまだ噂の段階を脱していない。
が、HPで募集要項が更新されていないことや、入学説明会が中止になっていること。
そして肝心のお問い合わせフォームがメンテナンス中で使用できないなどの不備が目立つ。
おまけに、運営責任者であるセンター長の挨拶もメンテナンス中となっている。
信憑性はかなり高そうだ。
その後の受け皿としての機関の話も聞こえてこない。
マードック大学が撤退するのは仕方がないにしても、運営を引き継いだ機関までもが撤退の方向ということか。
このままでは廃校となってしまうではないか。
事実だとして、そこに至るまでの経緯に関しては分からない。
それにしても、日本校第1期生が卒業しようとしているところでの決断には、やや無責任さを感じてしまう。
カイロプラクティックよりもビジネスが優先された形である。
理由はどうあれ、在籍している学生達には何の罪もない。
立場は当然保証されるであろうが、その心境は如何なものなのだろうか…。
TCCは、そうした学生を含めた他校からの編入を受け入れることを表明している。
斯くいうTCCも数年前、RMITの海外撤退を受けて誕生したという経緯がある。
アクレディテーションもRMITの時代に取得したもので、TCCとしては次回の更新が初の認定となる。
海外では、過去に同様のケースで認定を取り消された大学もあるため、安心はできない。
海外の大学経験者である私からすれば、TCCのレベルは認定に十分なものと感じている。
しかし、それを判定するのは私ではない。
もし、アクレディテーションが取り消される事態となれば、国際基準の是非が改めて問われることになるだろう。
『「国際基準」なんてどうでもいい』という意見が勢いづくのかもしれない。
ただ、そのためにカイロプラクティック業界全体のレベルが低下していくことが懸念される。
前回も述べた通り、もはや「個人の努力次第」という話では済まないのだ。
何事においても、勝ち得るまでは困難を極めるが、失うことは非常に容易い。
そして、一度失ったものを取り戻すには、これまで以上の労力が必要とされる。
もちろん、アクレディテーションとて例外ではない。
国際基準を失くしてはいけない。
アクレディテーションは死守しなくてはいけない。
日本でカイロプラクターとして生きていく以上、これは決して他人事ではない。
これを他人事と思えるのは、
例えば、海外で活躍されている先生方。
例えば、カイロプラクティックをビジネスの1つとして捉えている人。
例えば、日本におけるカイロプラクティックの発展に興味のない人。
そんなところだろうか。
それならそれで、一向に構わない。
ただ、足は引っ張らないで欲しい。
カイロプラクティック業界から「国際基準」という言葉が消えるような事態を招いてはいけないのだ。
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