私は何の考えも持たず、言われるがままイリノイ州シカゴ郊外にあるナショナル大学に入学した。
当時の私はカイロプラクティックの知識がゼロに等しかった。
そのため、学校によって習う内容に違いがあるなどとは微塵も考えてなかった。
「何でナショナルなんだ?? 一緒にパーマー行こうぜ!!」
コミュニティー・カレッジのクラスメイトからはよく言われた。
前回も書いたとおり、パーマーに行かない理由はあったが、ナショナルに行く理由は特になかったのである。
他に学校を知らないから行く、そんな感じだった。
それから数年後、カリフォルニア州オークランド郊外にあるライフウエスト大学に編入した。
時期にしてインターネットが普及しつつある頃で、モデムのスピードも2400bpsだった。
インターネットを開くに際し、1ページあたり3~5分はかかったという、今となっては信じられないような話。
まだまだインターネットから情報を気軽に得られるような時代ではなかった。
私がライフウエストに決めた理由の1つに、学校のマイナーさがあった。
当時、カリフォルニア州にはカイロプラクティック大学が5校あり、1校はまもなく廃校となった。
残った4校のうち、名前も存在も聞いたことがなかった大学、それがライフウエストだったのである。
「どうせなら、誰も知らないような学校に行ってみたい」
数ある選択肢の中から、敢えて繁盛していないラーメン屋を選んだような、そんな感覚。
こう書くと、すごくテキトーに思われるだろうが、私の中ではそれなりの理由があったのである。
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もっとも、マイナーというのも、単に私が無知で知らなかっただけの話。
日本の専門学校が2校、解剖実習で年2回訪れていたので、実際は全くマイナーではなかった。
当時は日本人学生も5人おり、何も知らない私からすれば、これも全くの予想外であった。
ナショナルが「理論(セオリー)重視」の大学とすれば、ライフウエストは「哲学(フィロソフィー)重視」の大学と言えよう。
そのため、ナショナルで習ったカイロプラクティックが全てだった私からすれば、ライフウエストのそれは全く別のモノのように思えた。
それを見学の時点で気がつけるくらいであるから、実際に入ってからの戸惑いは相当なものだった。
今でこそ立派な佇(たたず)まいを見せるライフウエスト大学。
しかし、私が入った頃はちょっと度肝を抜かれる位の汚さを保っていた。
聞けば、廃校となった中学校の施設をそのまま利用しているとのことで、納得はいった。
が、あの第一印象だけで入学を取りやめた人も、決して少なくはなかっただろう…。
中にはそれを「面白いっ!!」と感じる、私のような輩もいるわけだが…。
それ以上に気になる部分があった。
見学時に話した職員・学生はもちろん、アパートの管理人までもが"Best school"という表現を使ったのだ。
一体、何をして、そして何を以って"Best"と言い放つのか??
少なくとも、当時の建物に関しては限りなく"Worst"に近い。
それでも皆が皆、「だってここが一番いい学校でしょ」と口を揃えて言うところがすごく鼻を衝いた。
たとえどんなにいい学校だったとしても、"Best"という表現はあまり聞こえてこない。
歴史の浅い学校にもかかわらず、地元から"Best"と称されるまでに根付いた愛着感。
「外見ブサイクだけど内面は最高!!」という、その内面に触れてみたくなったのだ。
少々長くなったが、自分を例にとって書いてみた。
このようにアメリカではカイロプラクティック大学を選ぶ選択肢がある。
残念ながら、日本ではこうはいかない。
いわゆる「国際基準」の時間数を満たしている学校は2ないし3校だったろうか。
数年前まではRMIT大学日本校(現・TCC)のみで、選択肢さえなかった。
学校には特色というかカラーがあり、それが合う人もいれば、合わないと感じる人もいる。
合わないと感じた場合、他に選択肢がなければ、その道を諦めざるを得ない。
選択肢のある現状は、決して十分とは言えないものの、まだマシになったと言えよう。
個人的な意見であるが、国際基準がどうこうという意味ではなく、やはり専門学校の時間数は短いと思う。
そこから独り立ちしていくには相当なる決意と努力を要するだろう。
それを無くしては廃業の憂き目を見ることとなり、結果全てが中途半端で、時間とお金のムダに終わってしまう。
知る者の廃業というのは、たとえそれが然程親しくない者であったとしても寂しいものだ。
日本も「学位持ち」レベルでの選択肢がもっと増えて欲しいと思う。
カリフォルニア州が本州とほぼ同じ大きさだとしたら、やはり日本にも4校くらいはあってもいいのではないか。
そこで学生あるいは卒業生が意見や情報を交換したり、異なる学校の卒業生が一緒に働けるような環境ができたらいい。
レベルに明らかな格差があるから、変に人を見下したりする輩が出てくるのだ。
ある程度の高いレベルを維持できれば、下衆な輩も見下してるヒマがなくなるだろう。
レベルの底上げにはカイロプラクター各々のスキルアップが重要なポイントとなる。
そこから各人の意識レベルも高まっていくに違いない。
まずはできることから確実に成し遂げていこう。
ちゃんとカイロプラクティックしなさい。
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